ここで「ド=C3」の各倍音を見ていきましょう。第1倍音=C3、第2倍音=C4、第3倍音=G4、第4倍音=C5、第5倍音=E5、第6倍音=G5、第7倍音=B♭5と続きます。ではここで、倍音を出してみましょう。まず、C4G4C5E5G5B♭5を、鍵盤に音を出さないでそっと底まで押してみます。そのあとポンとC3を弾いてさっと離してみてください。先ほどの出さなかった6つの音がかすかに聞こえませんか。
人が音を聞く時に、倍音の量が多く含まれているかどうかを判断するのは印象です。音の印象から感じます。硬くて鋭い音は、倍音を感じません。柔らかく膨らみのある音は、倍音が多いと感じます。そういう音は、ホールでもよく響きます。
ロシアピアニズムの美しく豊かで多彩な響きの正体も、倍音の量にあります。人は無意識のうちに心地よい音を耳で聴こうとします。心地よい音を求める結果として、倍音の多い柔らかく膨らみのある音には行き着くのです。