19世紀の作品のタイトルには、当時の職業を題材にした作品が多く残されています。当時は、女性が外に働きに出ることが、殆どありませんでした。従って、仕事は家の中の手仕事に限られていました。その中の1つが糸紡ぎです。
糸紡ぎの仕事は、王族や貴族などの上流階級の貴婦人の仕事ではありませんでした。市民階級(市民革命の担い手となって、封建制を打破し、近代民主主義社会をつくり上げ、経済的には、産業革命を推進して資本主義経済体制を確立した人々の総称。中産階級と同義に用いられます。)の下の階層の人々の仕事でした。
羊毛(ウール)亜麻(リネン)絹(シルク)綿(コットン)などの糸をほぐし、くりくり回る滑車に巻き付けていくのが糸紡ぎの仕事です。中世のヨーロッパの気候は綿の育成には合っていませんでした。綿は絹よりも高級でした。最も流通していた素材は羊毛、次に亜麻でした。綿はどこに行っても高価な素材でした。また紡いだ糸を織るのも女性の仕事でした。セーターやショールを編んだりするのは、市民階級の女性のたしなみとされていました。